「倒産」と「破産」の違い

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2020年10月30日

1 はじめに

 会社の経営が破綻し,事業が立ち行かなくなる状態を示す言葉として,「倒産」「破産」という言葉があります。

 この2つの言葉は,同じように扱われることが多いようですが,厳密にいうと,異なります。

 「倒産」は「破産」を含む概念と言えます。

 以下,「倒産」と「破産」の違いについてみていきたいと思います。

2 「倒産」とは

⑴ 「倒産」という用語・概念

 「倒産」という用語は,中小企業倒産防止共済法など一部の法律で定められているものの,法律上,統一的な定義はありません。

 一般的には,上記のとおり,企業の経営が破綻することなどを示す言葉として使われます。

 倒産は,「法律上の倒産」と,「事実上の倒産」に分けて考えることができます。

⑵ 法律上の倒産

 破産手続き,特別清算手続き,民事再生手続き,会社更生手続きなど,法的手続きにおいて,倒産状態にある場合を言います。

 破産手続きや特別清算手続きは,債務者(倒産状態にある会社)の財産をすべて清算する清算型の手続きにあたります。

 一方,民事再生手続きや会社更生手続きは,事業の再生を図る再建型の手続きに当たります。

⑶ 事実上の倒産

 事実上の倒産とは,上記⑵のような法的手続きを行っていないが,現実には,倒産しているのと変わらない状態にあることを言います。

 倒産という言葉自体が,法律上統一的な定義がありませんので,事実上の倒産についても,明確な定義はありません。

 例えば,中小企業倒産防止共済法によれば,手形の不渡りを出してしまい,銀行等金融機関との取引が停止になった場合,事実上の倒産に該当するとされています。

 上記のとおり,「倒産」とは統一的な定義が定められていない概念であり,清算型や再建型いずれも含むものと言えます。

3 「破産」とは

 破産法によれば,破産手続きとは,債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続き,と定義づけられています。

 すなわち,清算型の法的手続きが「破産」手続きです。

4 まとめ

 「倒産」「破産」は,いずれも経営が破綻した場合に用いられる用語ですが,「倒産」はより広い概念であり,「破産」は「倒産」の1つの手続きであるといえます。

PageTop