運送会社の倒産について

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2024年01月29日

1 運送会社の倒産原因

 運送業界は、2024年から時間外労働の上限規制が及ぶようになり、人手不足が懸念されています。

 人件費や燃料代が高騰しているにもかかわらず、価格を元請や顧客に転嫁できず、赤字が続いている会社も多いようです。

 新型コロナウイルス感染症の蔓延時に受けられた融資も、当初は利息のみの返済であったものが、元本の返済が始まり、資金繰りを悪化させている会社が多いです。

2 倒産の流れ

 倒産には、破産や民事再生といった法的倒産だけでなく、手形の不渡り、夜逃げによる廃業もありますが、ここでは最も弁護士への相談件数が多い、運送会社が破産する場合を中心にお話しします。

 弁護士に相談して破産の方針を決めれば、いつ事業をやめるかを決めます。

 事業をやめるまでに必要な資料や費用を準備し、事業をやめる日に依頼した弁護士が金融機関や取引先に、破産を告知する文書を送るとともに、弁護士が裁判所に破産の申請をするのが一般的です。

 破産手続が裁判所で開始されると、破産管財人という第三者的立場の弁護士が選任され、破産管財人が会社の資産をお金にかえて債権者の皆さんに分配します。

3 倒産時の特徴1-車両の確保

 運送会社の倒産の特徴は、業務用車両を確保することの難しさです。

 会社所有の車であれば、売却して破産の費用や従業員の給料支払いに充てることも考えられますし、リース車であれば、リース会社に返却する必要があります。

 しかし、多数の車が事業所を離れたところを動いているため、倒産時には車が事業所に戻って来なかったり、盗難にあうケースもあります。

 車がなくなると、代表者の責任になる可能性もありますので、倒産を告知する方法や車をとめておく場所やとめ方を検討する必要があります。

4 倒産時の特徴2-預かった荷物の取扱い

 預かった荷物を配送できないまま倒産すると、配送を依頼した人にも配達先にも迷惑がかかります。

 倒産しても最後に預かった荷物だけは配送するだけの人員や車両を確保できるか、できないなら荷物を配送依頼した人に返還するのか等検討する必要があります。

4 まとめ

 運送会社の倒産は、車や荷物の取扱いのほか従業員や外注で配送を委託している先の対応等、検討すべき点がたくさんあるうえ、スピード感が求められます。

 運送会社の倒産の経験が豊富な弁護士に相談して、早めに対応を検討するのがよいでしょう。

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