会社破産における取締役の責任

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2022年10月06日

1 会社が破産しても取締役が責任を負うことは少ない

 会社が破産するとき、社長や経営に関わっていた取締役は、責任を感じていることが多いでしょう。

 会社と取締役個人は、別人格なので、会社が破産したら直ちに取締役に法的責任が発生するわけではありません。

 実際、破産した会社の取締役個人が損害賠償請求されたり、刑事告訴されるケースはまれです。

2 連帯保証債務の支払いがある取締役は、自己破産するケースも多い

 もちろん、会社の代表者は会社の借入の連帯保証人になっていることが多いです。

 会社が破産することで、連帯保証人の代表者が支払う必要が出てきますので、代表者も自己破産するケースが多いです。

 この社長が連帯保証人として自己破産したことで、取締役としての責任を果たしたと認められることが多いといえます。

3 損害賠償請求される場合

 取締役は、会社法上、善管注意義務・忠実義務と呼ばれる義務(法律を守ったり、取締役にふさわしい注意を払った経営を行う義務)を負っており、これに違反した場合は、会社や第三者に損害賠償義務を負うとされています(会社法423条、429条)。

 会社の経営には、取締役の広い裁量を認める経営判断の原則がありますので、通常の判断の誤りで損害賠償義務を負うことは少ないでしょう。

 ただ、大きな粉飾決算や財産隠し、明らかな違法行為があった場合等は、破産手続の中で役員責任査定と呼ばれる責任追及を受けるケースもあります(破産法178条)。

4 刑事罰に問われる場合

 破産法に、詐欺破産罪(破産法265条)や特定の債権者に対する担保供与等の罪(266条)があります。

 たとえば、債権者を害する目的で会社の財産を隠したり壊した場合は、10年以下の懲役や1000万円以下の罰金に処せられます。

 また、他の債権者を害する目的で、一部の債権者にだけ返済した場合は、5年以下の懲役や500万円以下の罰金に処せられます。

 これらは、取締役が行いがちな行為ですから、破産する会社の財産を動かしたり支払いをする場合は、弁護士に十分相談し、刑事罰を受けることのないよう注意しましょう。

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